ここは、とある町の奴隷市場だ。
片隅の方に人だかりができている。
ちょっと覗いてみよう。
人だかりの中では、一人の少年が押し切りにかけられていた。
そして、押し切りが、しゅたんっ!!っと小気味のいい音を立てると、少年の股間のものは、球の入った袋ごと、下で受ける小さな桶の中に落ちて行き、見物人たちは歓声を上げた。
別の場所では、この奴隷市場に敗戦国から連れて来られてきた、4歳から20歳くらいまでの男ばかりが並んでいた。
皆、後ろ手に縛られており、恥毛が生えているものは全て剃り落とされている。
彼らは、競り落とされてから股間のものを落とされることになっていた。
なぜ、あらかじめ切らないかというと、すでに去勢してあるということは、誰かに買われて転売されてきたものと見做されるからであり、それでは商品の価値が落ちるからだということだった。
おや、一人競り落とされたようだ。
その少年は、買い手がついたとたんに、買われる=去勢と知っているから泣きわめき始めたが、手早く轡をかまされて、袋ごと革ひもで付け根を結わえられてしまった。
そうされると、少年の股間のものは見る間に勃起してゆく。
押し切り自体の高さは、大人の腰丈程度なので、そこに満たない者は、台座を使ったり、幼児に小便をさせる恰好で目いっぱいの大股開きにさせられる。
去勢される者を押さえつけるのは、奴隷市場で働く大男であり、彼の力にあらがえる者はいない。押し切りを担当しているのは、20くらいの、優男風の青年だった。
彼の名前は、ルカといい、街一番の去勢師だそうだ。
彼が道を歩くのを見ると、小さな子供は泣きわめき、あるいは、蜘蛛の子を散らすように逃げだす。
親も、我が子が言うことを聞かないときは、「ルカのところに連れてゆくよ!」と一喝する。
これで、言うことをきかない男の子はまずいないそうだ。
ルカは、手早く手桶に汲んだ胡椒湯で少年の股間を洗い、左手で股間のものをつかんで引っ張りながら押し切りにかけると、そのまま躊躇なく刃を下ろし、刃を下ろしきる辺りに、左手を放す。
眉ひとつ動かさず、顔色一つ変えず、それこそ藁の束を切るがごとくに。
その刃は、確実に、くくってある革ひもの、体寄りの方に下ろされ、革ひもを断ち切ることは決してない。
だから、桶の中にある男性器の付け根には、みんな革ひもがくくったまんまとなっている。
切り株を残さないためには、引っ張れるだけひっぱる必要があるのだ。
実際、ルカが去勢した者を見ると、一目で判るという。
「まるで、カエルの腹のごとくに、生まれつき何もついていなかった様に仕上がる」から。
少年は、あっという間に自分の股間のものと永遠に泣き別れてしまう。
その瞬間には、轡の中でくぐもった声をあげ、涙を流しているが、ルカは一顧だにしなかった。
傷口を処理するのは、ルカより少し若い男で、彼の名はロコ。
ルカの弟で、優秀な薬師だという。
ロコに手当てされた者は、近くの療養所でひと月ほど療養する。
傷が癒えたら、奴隷を買った時点で手渡される木製の引き換え札と交換に、買い主に引き渡されるとか。
次の男がやってくると、ルカは、また先ほどの作業にかかる。
淡々と、黙々と。
大きな桶の中は、小さな桶から移された大小様々の男性器でいっぱいになっているが、暫くすると、別の者が回収にやってくる。
その女に、話を聞いてみた。
かつては、確かに去勢した証として、天日に干したり油で揚げたりしていたが、今では、量が多すぎる…
一日平均50人ほど去勢するし、買い手の眼の前で去勢することになった…去勢が確認できたということになったので、証拠はいらないということだ。
袋の方は、加工されて小銭を入れるきんちゃく袋になるそうだし、袋の中身は、酒に漬け込まれて精力剤の原料になる。
たまには、そのまま飲み込むから売ってくれ、という者もおり、そういう者にも売っているそうだ。
竿の方はと言えば…
犬や豚の餌にされてしまう、ということであった。
「さーあみんな!盗っ人ガキのチンボコとキンタマだ、ビンビンにおっ立ててるぞ、とくと拝んでやってくれ!!」
いきなり大声が響き渡る。
例の押さえつけ係の男が、全裸にされて轡をかまされた10歳前後の少年を、後ろから足を抱えた大股開きにして皆に見せびらかしていた。
その、育ち始めたばかりの男性器は、付け根を袋ごと縛られて勃起し、包皮が半分ほど剥けて、えらが張り始めた亀頭が顔を覗けていた。
普段は、さぞや友人に見せびらかしているものなのだろう。
少年の顔が、恥ずかしさと痛みで真っ赤に染まって歪んでいる。
彼は、この市場で万引きを働いたのだそうだ。
「盗人ネズミにゃあチンボコやキンタマなんて生意気なもんはいらねえぜ、増えたら困るもんな!!立ちションも出来ねえ方が、一目で盗っ人って判って好都合だ!今からすぐにルカがぜーんぶちょん切るぞ!!」
少年の目から、たちまち涙がこぼれおち、抵抗しようと身をよじるが、全く抗えない。
彼の男性器も、ルカの手によってあっという間に切断されてしまった。
この街では、すりも万引きも、理由の如何を問わず、現行犯で全裸にして即座に去勢という決まりがあるのだという。
そして、少年の身体についさっきまでくっついていたものは、彼を連れてきた商店主の手によって、そこに住み着いている野良犬に放り投げ与えられてしまった。
自分の大切な物が、犬にひと飲みされるのを見た少年は、激痛と絶望で泣き喚くが、商店主も見物人も誰も一顧だにしていなかった。
しばらくすると、見物客の中から、ひときわ大きな声が上がり、去勢されたばかりの先ほどとは別の奴隷少年が大暴れしているのが見て取れた。
様子を窺いに行ってみると、「切り落とされて桶に落ちたばかりのところに、例の野良犬がやってきて、少年の眼の前でぺろりと一口で食べてしまった」ということであった。
少年は、ショックのあまり、完全にパニック状態に陥っていた。
暫く経つと、押し切りの刃は新しいものに取り換えられる。
それが、ルカとロコと押さえつけ係の休憩時間だ。
切れが悪くなるので、一日、最低3回取り換えては研ぎなおすのだそうだ。
刃が取り換えられて押し切りの前に連れて来られた20くらいの白人男を見て、見物人が一斉にどよめいた。
その男は、見事な巨根と大きな睾丸の持ち主であった。
長さも太さも、10歳前後の子供のひじから先ほどあり、血管が浮き出し、当然露茎して反り返っている。
二つの睾丸は、まるで烏瓜の様だ。
涙を目いっぱいに浮かべてかぶりを振る男を完全に無視したルカは、男のものを、鷲掴みにしてひっぱると、またもや、しゅたんっ!っと押し切りの刃を下ろす。
男の竿は、見事な二つの睾丸もろともあっという間に切断され、ぼとっと重たげな音を立てて、睾丸を下にして桶に落ちた。
空っぽだった桶の中身は、彼の男性器だけでいっぱいとなった。
白人男は、それを見て大粒の涙を流し始めた。
この男の男性器だけは、男の買い主が引き取り手となった。
血抜きして、樹脂を注入し、トロフィーにするということだ。
この買い主は、そうしたいがためにこの男を買ったということであり、興味の対象もコレクションしたい男性器のみなので、傷が癒えた奴隷その物は中古品として安く流すことで有名な男だった。
彼の屋敷には、そうやって加工された多数の男性器が飾ってあるそうだ。
ちなみに、この、押し切りによる買い手の目の前での去勢を考え付いたのは、ルカだということだ。
あまりにも去勢される人数が多いので、いちいち手足を縛っていては手早くできない、証拠としての男性器を加工する時間ももったいないというのがその理由であった。
ところが、一物を切られて泣きわめく男たち見たさに、老若男女問わず見物人が多く押し寄せ、それを目当てに屋台も出るので、ここいら辺はおかげで大賑わいになっており、万引きやすりは見せしめのためにいかなる理由があろうと現行犯で捕まえたら即座に去勢という新しいルールも出来たおかげで事件も減り、みんながルカに感謝しているそうだ。
ルカは、去勢師ではあるが、女性的で端正な顔立ちと、下品な態度を片鱗も見せずに、淡々と仕事に取り組む態度から、結構女性にも人気があるのだとか。
公衆浴場で、ルカと会った別の男は言った。
「あいつ?…付いてる付いてる、ちゃんとぶら下げてるよ。さっきちょん切られてトロフィーにされるって奴ほどじゃないが、チンボもキンタマも結構立派だぜ。俺のよりでけえや。」
最後に、ルカの方にも「男性器を切り落とす仕事に罪悪感はないのか」と話を聞いてみた。
ルカは、そっけない態度でこう答えた。
「これが、持って生まれた俺の仕事。奴隷を求める側がこれが必要だということ、街の人が秩序を望むために俺に求めていることを、俺はただこなすだけだ」と。
押し切りの音が響くたびに、見物人の歓声が立ち込める奴隷市場を去るとき、露店の雑貨屋をちらりと覗いてみた。
…そこに売られていた、革袋の小銭入れは、確かに、男の股間についている袋をなめしたもので出来ていた。
前作はこちら
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投稿:2010.12.02更新:2010.12.05
奴隷市場
著者 真ん中 様 / アクセス 38107 / ♥ 46