初めての方は古城の中から◆PART1〜バブルの果て◆からお読みください
この作品は古城の中から◆PART2〜プロジェクト始動◆からの続きです
さて、事件は会議室で起こるわけではないので、プロジェクト会議の場面はこのぐらいでフェードアウトしよう。
企画から1年、施設は準備万端整い、いよいよ全国のボランティア会員から、このプロジェクトへの志願者が参集された。ボランティアに実技を実地体験してもらい、最終的な割り振りを調整するためである。
人気があつまったのは、やや意外なことに「宮刑体験」で、これは清時代の中国の「宦官作成」の方法に倣って、麻酔も無しで陰茎と陰嚢を一括りに縛って切り落とすという過激なものであった。
そればかりではなく、ボランティア志願者からは、自分が希望するイベントが続々提案された。
その中から志願者数が多いものや、お客を呼べそうなものから実施していく方針である。
特別な行事のイベントは、日々の常設展に比べて、より一層不可逆的なもの、つまり身体を元に戻せないないような拷問処刑も多くしたた。「入墨刑」「焼印刑」あたりは常設展でも可能であるが、中国の「足切刑」「鼻削刑」そして去勢刑である「宮刑」、欧州の「舌抜刑」「関節潰し」、イランの「手首切断刑」まで、続々提案が出された。
一生治らない傷を負っても「自己責任」というわけである。
その中では、陰嚢を2枚の板で挟んで、2つの睾丸ごと押し潰す去勢は、比較的手軽であるとして、人気を博している。
2枚の板の間隙は、ネジを回すことによって徐々にゆっくり狭まっていくので、長時間の拷問を味わうことができるようになっている。
ただし、睾丸だけの去勢は、ここでは単なる拷問の一種で「宮刑」とはみなされず、体験者も「宦官」としては扱われないとのことだ。
特に強烈だったのは命を懸けたというよりは、ほぼ確実に命を落とすであろう拷問処刑の実践の希望者が少なくなかったことである。
欧州部門からは「魔女狩り火刑」で火だるまになるとか、鉄の輪で首を締め付ける「ガロット」で絞首刑になるとか、「ギロチン」で斬首されたいとか言った過激なものも飛び出した。「鉄の処女」もあったが、これは展示用の拷問具でのパフォーマンスではなく、棘の長い処刑具を希望するというものである。
日本部門でも「磔」「串刺」「火焙」を始め、水死刑である「簀巻」などの希望者が現れた。
中国部門では一寸刻みに肉を削ぎ取る「凌遅処死刑」や首ではなく腰を切断する「腰斬刑」の志願者もあった。
開催場所は大広間と温泉プール、中国庭園跡の広場が用意されていた。 また、これまでの実験で使用された牧場やスキー場の跡地や山林も使われることになった。なにせ、土地はものすごく広いのである。
ポランティア志願者は短期集中型の研修で、できる限り多くのセクションで拷問パフォーマンスを行えるように訓練を積んだ。
逆さ吊り体験は屋内だけでなく、野外でも行われた。屋外であっても去勢者は慣例によって全裸となって、昼夜の寒暖に耐えた。
この訓練は一つの拷問具でのパフォーマンスを、現実にどのぐらいの時間耐えられるのかといった実証実験も兼ねていた。
そのため女性ボランティアも次々と過酷な試験に挑戦していった。
中でも海老責の耐久試験は長時間続くので、なかなか見ものであった。
石抱きは比較的ソフトと言われているが、それでも体験後の脛はご覧の通りとなる。
すべてが過激なものではなく、江戸時代の手鎖刑の1週間連続体験といったものもあった。これらも着用期間中の衣服の脱着は不可能で、用便も一人で行うのは結構難しいといった関門が控えていた。
服装は宮刑体験で去勢した男性を除き、前陰部は隠すことにしていたが、性器、股間。下半身への拷問など、中には例外も設けざるを得なかった。
股裂き、三角木馬、苦悶の梨などが典型的な例である。
訓練と試験の結果、ボランティアはランク分けされた。数字が多いほど「高度な拷問」に耐えられることを表している。
例えば、いわゆる石抱き拷問、つまり三角柱を並べた十露盤という板の上に正座して座らせる拷問の場合、レベル1の者は、太腿の上に載せられる20キロの重さの伊豆石は1枚まで、継続時間は5分までだが、レベルならば伊豆石3枚で30分までといった具合である。これに耐えられないものは、ボランティアではなく、一般の協力者、お客として体験参加することになった。
ボランティア会員の中にはもちろん、拷問を受ける側ではなく、行ってみたい者もいた。彼らが協力を申し出た場合はスタッフを兼ねることになった。
ボランティア会員は著しく男性に偏っていたが、少数ながら女性会員もいた。女性会員の協力者は、貴重な存在であった。殆どがスタッフであったが、体験者を希望する女性もいて関係者を喜ばした。
実は、日本式の磔柱は男性用はキの字、女性用は十の字と形が異なるし、口や膣や肛門に差し込んで拡張する「苦悶の梨」の機能をすべて実演するには、ぜひとも女性のパフォーマーが必要だったのだ。
一方、幹部会で発案された一般客の体験コースの準備も着々と進んでいた。そして、いよいよゴールデンウイークにあわせたグランドオープンの日を前に、関係者への内覧会が行われようとしていた。
(PART4に続く)
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投稿:2014.01.26更新:2024.08.18
古城の中から◆PART3〜ボランティア群像◆
挿絵あり 著者 名誉教授 様 / アクセス 39606 / ♥ 167