WARNING-AGAIN
[ゲイ(バイ?)][両性具有][グロ][強姦][殺人][食人]
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1話目
2話目
3話目
4話目
5からつづく
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『雫』の手当てを受けて、肩を填め直された『暁』は、安静を言い渡されて暇を持て余していた。隣ではすやすやと気持ちよさそうに『大樹』が眠っている。
小屋の外でテキパキと混乱する人々をまとめ上げる『若葉』の声が響き渡っていた。『雫』と『流水』も、他に手当てをしなければならない者がいるからと既に去ってしまった。『影』に怪我をさせられていた村人は存外に多いらしい。『影』の影響を慮って治療ができなかった者達も、今なら手当てが出来るから、と言われては引き留めることもできなかった。
興奮から醒めて、掟破りの決闘に再び疑問の声を上げる者もいた。決して『暁』に敵対するわけではないが、と前置きした上で、神聖な儀式を汚してしまったようで腹の座りが悪いとこぼす。頭は固いが、善良な者たちだ。
彼らを説得したのも、『雫』だった。『雫』は、あれは「決闘」ではない、と説いた。そもそも『影』は長のごとく振る舞っていたが、まだ正式に代替わりは行われていなかった。『暁』は禁じ手を使ったが、『影』も身一つで行われるべき戦いに武器を隠し持って挑んでいた。あれを「代替わりの決闘」などと認める必要はない、無効だ、と。
ではどうするのかと、問おうとした者たちに、『雫』は言った。選べば良いではないかと。我らの上に立ち、導くにふさわしいと思う者の下に改めて集えば良いと。
『黄金』様は『暁』様にその御種を悦んで賜り下さると仰っておられますが、と、主治医が告げたことが決め手になり、彼らは揃って『暁』を長とすることを認めた。そして、そろって『暁』に向かって頭を下げて頼み込んだ。
これ以上揉め事が続く前に、早く長の座について村を安定させて欲しいと。ついては、前長の性具の継承を速やかに終えて欲しい。『影』が今晩行おうとしていたので儀式の準備はできているし、前長が納得の上であるからそもそも決闘は必要ない。
『暁』は万感の思いと共に頷き、そして、人々は準備の為に慌ただしく動き始めた。
音頭を取る『若葉』の元、広場に飾りつけがなされた。中央に革の寝台が置かれ、角度が悪い、観衆から肝心な部分が見えないと、喧々諤々の応酬が行われている。
じっとしていることに我慢が出来なくなり、自分も飛び出して混ざろうかと思い始めたのを見計らったかのように、染料の壺を抱えた『流水』が戻ってきた。
『暁』は諦めて息子に身を任せ、その身体に模様を描かせた。『流水』は、苦心しながら肌の傷跡をうまく取り込んで目立たぬように色を塗る。息子が真剣に、だが余裕をもって楽しそうに絵を描いているのを見て、『暁』は目を細めた。思えば、ずっと『流水』は張り詰めた表情をしていた気がする。なまじ優秀で能力があるだけに、子供にあるまじき重い責任を負わせ続けていたように思う。
今、『流水』はのびのびとその小さな指先を躍らせ、自分の頬に染料の汚れを擦り付けながら、いかに、ヘソの下の渦巻きをペニスの螺旋模様につなげるか、考えている。
自分が間違えれば人が死ぬと知りながら唇を噛みしめて手を動かしていた息子の顔を思い返しながら、『暁』は、己の無謀につき合わせたことを詫びるべきか、よくやったと褒めるべきか、我が子に対してなんと声をかければよいのかわからなくなっていた。無言で息子を見つめる。
「父様、勃起したときの見栄えを確かめたいので、勃たせて下さい。半勃ちくらいから最大のところまで順番に。擦らないで手を触れないで絶対に汁は垂らさないように…」
言葉の途中で父親の視線に気づいた『流水』はきょとんとした無垢な面差しで首をかしげる。
「どうかしました?」
「この村が好きか『流水』」
『暁』の問いがいつかのものと同じことに気づいた『流水』は一瞬目を見開いた。あのころの何も知らなかった自分と今の自分の間には果てしない経験の隔たりがある。『流水』に見える世界も変わっている筈で、事実少年の見ているものは違った。
それでも答えは同じであるから、『流水』はにっこりと笑って答えた。
「はい、父様」
『流水』は『暁』の膨らんだ子宮の上に輝く太陽の紋を刻み、父のペニスが勃起すると、ちょうどその太陽を突き上げる風に見えるのを確認して、満足そうに汗を拭った。
「おお、うまいこと見栄え取り繕ったじゃねえか。どうなることかと心配してたが、あのボロ雑巾みてえなみずぼらしいとこからよくここまで飾りたてたもんだ。ってか肩の模様、絵の具じゃなくて痣だし」
日が暮れて、儀式の準備が出来たと伝えに来た『若葉』は、色鮮やかに塗られた『暁』を見て、褒めた。ついでに隣の『大樹』の寝顔も覗き込む。
「まったく、まだグースカ寝てやがんのか。人が忙しくバタバタしてるってのにいい気なもんだ」
「そう言ってやるな。傷は深くないようだが、当たり所が悪ければまずいことになっていたかもしれんのだ」
「まあ、アンタは庇われた方だからそう言うしかねえだろうけど」
『若葉』は肩の関節を鳴らしながら腕を回す。
「村の酔っぱらい連中は道端で騒ぎ回って邪魔しかしねえしよ。頼りになるはずだったオレンジのニイちゃんは自分から牢に入ってサボろうとしやがる。そんな遊んでるヒマはねえってんで、ケツに鞭打って働かせてるが、むしろ喜んじまってる上に、見回る側がそんなんじゃあ、イマイチ引き締まらねえ。村中フワフワ浮かれたバカばっかりだよ」
『暁』は笑った。
「他人事みたいに笑ってんなよ。アンタの村だぞ」
『若葉』の言葉を聞いて、『暁』は目を丸くした。これまで、『暁』にとってこの村は『黄金』の村だった。自分の故郷ではあったが、『暁』の村ではなかった。
それが、変わる。
「そうだな…私の村だ」
呆然としながら感慨深く呟く『暁』をしばらく眺めていた『若葉』は、やがて音高く『暁』の尻に手を叩きつけた。
「今日は我慢してやる」
驚く『暁』に、『若葉』はふんぞり返って宣言する。
「キンキラのオッサンとの最後の晩だ。ずっと惚れてた男を抱けるってときに無粋なことは言わねえ。他の事はみんな忘れてしっかり腰振ってこい」
『暁』は呆気にとられたまま頷く。
「でも、明日の晩はオレのところへ来いよ。一番の功労者はオレだからな!」
『若葉』の言葉を聞いて『暁』は笑った。『若葉』の方から『暁』に夜の誘いを持ちかけたのは、これが初めての事だった。
「わかっているとも。約束しよう」
『暁』は『若葉』を抱き寄せて唇を合わせた。舌を絡めながら『若葉』の尻を撫でる。少し膨らみ始めた胸を逆の手でくすぐって、臍から股へと指先で線を引く。去勢の傷跡をなぞると、『若葉』の全身が震えた。そのまま湿ったヴァギナを割り開こうとして、頭を殴られる。
「だから明日だっつってんだろ、バカか! ほら、身体を寄せるな! せっかく描いた染料が落ちる!」
唇を唾液で湿らせたままおどけた顔をする『暁』を小屋の外へ押し出すと、その背中に再び掌を叩きつけて、赤い手形を残す。
「そら! 行ってきな!」
足を踏み出した『暁』を、村人たちの歓声が出迎えた。
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太鼓の音が響き渡る。三色の月が空に並び、今再び天は聖なる白銀の色に染まった。
『暁』は広場の中央への道筋を一歩一歩踏み締めながら、緊張に身を震わせていた。『流水』から様子を聞きつけてはいるが、『暁』自身はまだあれから『黄金』と顔を合わせていない。一刻も早く飛んでいきたいと思う気持ちがなかったわけではないが、『暁』は再開の時は、いずれきたるべき、その場所で、と、そう決めていた。
そして、今こそがその時だ。待ち望んでいたはずなのに、わけもなく逃げ出しそうになる心を押さえて、待ち望み、歓喜の叫びを上げる村人たちをかきわけ、進み出る。
顔を上げた『暁』は息を呑んだ。三つの月が放つ光が広場の中央を照らし出す。その中央にいる偉大な男の屈強な肉体を。
確かに腕や脚は歪んでやせ細っていた。しかし、その張り詰めるような存在感は少しも衰えていない。近づく『暁』を見つめる『黄金』の瞳は月自身より明るく光り輝いていた。突然『黄金』の下腹から、巨大な男根が雄叫びを上げる獣のごとく持ち上がった。先端から透明の雫が滴り落ちる。
自分を見て、愛する男が欲情しているのだということを見せ付けられ、『暁』の膣にも愛液が溢れた。今すぐにでもまたがって、その肉の剣を迎え入れ、腰を振りたい気持ちになったが、それはもはや、この二人の間に起こることがないと、お互いにもうわかっている。今宵の役割は逆なのだ。下腹に疼く未練を押し殺しながら、『暁』は、残った理性で『黄金』の勃起をいぶかしく思った。
『暁』が広場に出てから、ペニスが首をもたげたということは、儀式の前に媚薬を与えられていないのだ。段取りに不備でもあったのだろうか。この大事な夜に。
近づいた『暁』の心を読んだかのように『黄金』が耳元へ囁いた。
「私が断った」
『暁』が眉を上げると、『黄金』は好色な笑みを浮かべた。
「お主なら薬など無くても私を高みへ導いてくれるだろう。だから私が断った」
『暁』の頬に赤みが差したが、『黄金』は平然とした表情のままだ。媚薬には麻酔の効果もあるというのに、それを断るとは。切断の瞬間に萎えてしまうのは不吉な証となるのに。
『黄金』はゆっくりと『暁』を諭した。
「私は最後まではっきりとお主の顔を見ておきたいのだ」
関節を失った指が『暁』の顔を撫でる。
「薬に心を奪われるわけにはいかない。私の男根を食らうお主の顔をこの目に焼き付けておかねばならんからな。案ずるな。今宵の私はもう事切れるまで萎えん」
『暁』が答えるように『黄金』の髭を撫でると、『黄金』は目から涙を流してその手に鼻を擦りつけた。
「愛する者がこの手の届くところにいて、萎えてなどいられるものか」
甘えるように『黄金』は、『暁』の指を咥えてしゃぶった。『暁』の目からも涙が溢れる。
「会いたかった」
溜息と共に手のひらに吐き出された言葉に、暁は何度も頷いた。
「私もです」
「二度と会えぬと思っていた」
「そんな馬鹿なことがある筈がありません。私があなたを捨てて去るなど…」
「もちろん、私はお主がこの村に戻ると信じておった。そして必ず長になるとな。しかし、私の種を食らうのは『影』の奴だと思っていた。それに…」
『黄金』はゆっくりと手を撫で伝わせて、『暁』の身体をなぞった。そして、へそと先走りの滲むペニスの間の陰毛の茂みを包み込む。膨れた下腹の張り詰めた皮膚の下には、赤子の胎動が感じられた。
「私の子も守ってくれたのだな」
「もちろんです」
『暁』は胸を張って答え、下腹を突き出し、『黄金』の掌に擦りつけた。『黄金』の諦めた子を守りぬいた。そのことは、誰はばかることなく誇れると、『暁』は思っていた。
「ありがとう」
『黄金』は目を細めて笑った。しかし、細めた奥の瞳は、何一つ見逃すまいと、『暁』の姿を捉え続けていた。
「私は幸せだ」
『暁』は、何も答えず『黄金』の唇を奪った。愛する男の匂いを鼻に満たしながら舌を絡めた。押し合わされた身体の間で二本のペニスが剣と剣のごとく打ち合わされる。儀式を忘れそうになった『暁』を押しとめ、『黄金』は息を荒げながら顔を離した。
「皆の者!」
突然、『黄金』は大声を張り上げた。それはかつての勇姿を思い起こさせる力強い響きで、一族の者は白銀の月光の中に、槍を掲げて敵陣へと飛び込む『黄金』の姿を見た。
「今までお前達を率いた男は、新たなる長に喜んでこの身を捧げる事を知れ! 我が血と肉に流れる偉大なる始祖達の力は、全てこの若き戦士に受け継がれ、お前達に更なる栄光と繁栄の種を孕ませるであろう。『暁』の一族よ! 偉大な長の世に生きることを喜ぶがいい!」
畏怖に打たれた一族の者達は、言葉を失い、跪いて中央の偉大な男達を見守った。
『黄金』は再び『暁』の耳元に囁きかけた。
「さあ、皆が待っている。私ももう我慢できん。早く抱いてくれ」
そう言って、『黄金』は祭壇の上で身体をひねり、不自由な腕で不自由な脚を抱えて何とか僅かに股を開いた。すでに『黄金』の陰嚢の下からは、トロトロと愛液が溢れているのが見えたが、それでも『暁』は重い袋の下に隠れていた割れ目を覗き込み、たっぷりと唾液を塗り込めた。唇で襞をかき分け、探り当てた陰核を舌先でくすぐると、『黄金』の身体が震える。『黄金』はこれを『暁』にやるのが大好きだった。今まで何度も愛されたときのように、こちらも全身全霊を持って愛を返さなければ。『暁』はかつての『黄金』の性技を一つ一つ思い返しながら、丁寧に舌で『黄金』の全身をなぞった。描かれていた卑猥な模様の染料が汗と唾液で流れてしまったが構いはしない。『黄金』に無駄な装飾はいらない。たとえ腕や脚が潰れていても、この身体は美しい。
この裸を見よ! 一糸まとわぬ真の姿を見よ!
一族を治めた偉大な王の最後の勇姿を見よ!
『暁』は『黄金』の巨体を腕に抱え、片手と唇で両の乳首を攻め立てながら、もう一方の手で、皆にしっかりと見えるように『黄金』の陰唇を広げ、陰核を指先でこね回した。時々亀頭の先端と膣から間欠泉のように噴き出した体液が、月光を浴びてキラキラと宝石のように輝く。そうだ。『黄金』の肉体を飾るのは、染料などではなく、この輝く愛の雫であるべきだ。
頭をのけぞらせ、首筋に血管を浮かび上がらせた『黄金』が、何度か切ない喘ぎを漏らすと、勢いよく精をほとばしらせた。宙を舞った粘液は、激しく彼自身の顔を打ち、滴り落ちて汗に濡れた金色の胸毛に絡む。
『黄金』の言葉通り、そのペニスは射精の後も萎える様子が無かった。『暁』が握ると燃える鉄のような肉塊が脈打ちながら震えているのがわかる。幹を絞るように掴んでいる『暁』の手に、少し陰茎が擦り付けられたが、すぐに動きが止まった。『黄金』は歯を食いしばって腰を振りたい衝動に耐えていた。
「駄目だ『暁』…駄目だ…」
そうだ。ペニスへの刺激でイカせてしまっては、本来の目的が果たせない。『暁』は陰茎から手を離した。支える手も必要なく、『黄金』の男根は天を突いてそそり立ったままだ。『暁』はそっと腰を寄せ、『黄金』の秘唇の割れ目を、己の男根の先でついとなぞった。
『黄金』の身体がぶるりと震える。『黄金』が微かな声で囁いた。
「ずっとお前に抱かれて見たかった」
いままでずっと『暁』を、初夜のときから数え切れぬほど抱き、喘がせてきた男がそれを言うのだ。『暁』は『黄金』の手を握った。今の『黄金』に握り返すことは叶わなかったが、二人はお互いの繋がりをしっかりと感じていた。
『暁』の繰り出した股間の槍は、狙い違わず『黄金』の子宮を突き上げた。叩きつけられた肌と粘液の立てる音が、二人の叫びにかき消される。
目の前の姿を見ていなければ、処女の生娘と間違うような強い締め付けに、『暁』は歯を食いしばった。ずっと、『黄金』はずっと長だった。『暁』の産まれる前から、偉大で勇敢な王だった。『黄金』自身は割礼を終えて幾年もたたぬうちに長の座に着いたと聞く。その身を貫いた男はそう多くない筈だ。長になるべくして産まれた男、膣の締まりがそれを証明している。
顔を寄せて唇を合わせたかったが、今の『暁』の腹では届かない。だから『暁』は『黄金』の口元に指を伸ばした。『黄金』はそれを啄ばんでしゃぶった。咥えられた指の隙間から快感に悶える呻きが漏れる。
やがて『黄金』は、膣口の輪をヒクつかせながら、一度目の射精に負けぬ勢いで、二度目の白濁を散らした。『暁』の突き上げに合わせて弧を描いた白い筋は皆の眼前で輝き、新たなる支配者が、かつての王を名実共に制圧した瞬間を、その場にいた全員が見届けた。
そして『暁』のペニスも『黄金』の体内で震え、熱い精を流し込んで、その子宮を焼いた。『黄金』は久しく感覚を忘れかけていた場所を蹂躙する精子が、己の子として根付くことはないのを少し残念に思いつつ、それでもまた、自らの望み得る人として最高の最期に至福を味わっていた。
後は切るだけだ。余韻覚めやらぬままトクトクと精液の残滓を尿道から垂らし続けている『黄金』の陰茎をつかんだ『暁』は、その太い根元にナイフの刃を当てがった。この刃を引けば、全てが終わる。光り輝いた『黄金』の時代が、終わる。
いつしか涙が溢れていた。『暁』は愛する男のペニスに頬を寄せ、その睾丸に口付けを落としながらむせび泣いた。腕に力が入らない。鉄の鎧を貫く腕力を誇る腕が震えてナイフを使えない。早くしなければ儀式が台無しになる。焦る『暁』の指からナイフが滑り落ちた。静まり返った広場に落ちたナイフは乾いた音を響かせ、観衆の間にどよめきを呼ぶ。
切れない。
頬に当たる熱への未練が、この期に及んで『暁』を縛り付けていた。脈打つペニスにしがみついて涙を流す『暁』を見ながら、『黄金』はゆっくりと微笑み、潰れた腕で幼子を抱えるように『暁』の頭を包み、優しく撫でた。
顔を上げて謝ろうとした『暁』の口に、『黄金』が指を差し入れて塞いだ。そして、悪戯を思いついた子供のような、いつもの笑いを浮かべると、喘ぎ続けてかすれた喉で一同に向かって言い放った。
「見逃すな! 今から我等の新しい長が、私のイチモツを直に齧り取るぞ!」
驚きに目を見開く『暁』に『黄金』は語りかけた。
「無粋な刃など不要だ。我等の間にあってよいのは、ただお互いの肉体のみ。そうであろう?」
そう言ってにやりと笑うと、真摯に顔を引き締め、自分のペニスの根元を支えて『暁』の唇に擦りつけた。
「しっかり受け取ってくれ。全てお前のものだ。また他の者に取られる前に、さあ」
こわごわと『暁』は口を開いた。大きすぎる『黄金』の陽根は、屈強な『暁』の口にも収まりきらず、先端を頬張るので精一杯だった。それでも舌先で亀頭の表面を擦ると、満足そうな溜息と共に、『黄金』の口から呻き声が漏れる。
『黄金』への口淫は、初めてだった。長の性器にまかり間違って歯でも立て、傷でもつけようものなら、一族の性生活に支障をきたす。だから、『暁』も恐れ多さに咥えようとすることはなく、『黄金』も誰かに咥えさせようとすることはなかった。
実際、『黄金』にとっては膣への挿入以上に久方ぶりの感覚であった。『黄金』の反応を頼りに自分を取り戻した『暁』は、その両手を再び『黄金』の股間へ伸ばした。右手の二本の指を膣に差し入れて中をかき回し、残りの二本を肛門に潜り込ませて奥のしこりを突き上げる。左手は毛深い陰嚢を握って揉み解し、余った指関節でクリトリスを押しつぶすのだ。
舌先で尿道を押し広げながら『暁』は『黄金』の全てを、二度の射精で竿に絡みついた精液と、今も溢れ続ける先走りの苦味を含めた全てを愛した。『暁』が指に力を入れるだびに、舌を回すたびに、唇で吸い上げるたびに、快感を感じた『黄金』の全身が、特にペニスが、ビクビクと震えた。その反応を見て、強すぎる刺激に感覚が鈍ってくるのを知ると、『暁』は、攻め方を替えて挑む。快感の波を途切れさせてはならない。『黄金』の最後の射精を、生涯最大のオーガズムにすること。それが『暁』の使命であった。
『黄金』は野獣のような太い首に血管を浮かび上がらせて、枯れた喉で吼えるように甘い嬌声を上げ続けていた。一族の戦士達に、これから彼らを抱く男の技量を教え続けていた。悦楽によがり狂う『黄金』の痴態と声に、固唾を呑んで見守る者たちの足元にも、股間から垂れたそれぞれの体液のぬかるみが広がっていた。
「『暁』…もうすぐだ…もうすぐイ…クッ…」
呼吸もままならない『黄金』の苦しげな喘ぎに『暁』は目を合わせてうなずき、幼子を抱えるように『黄金』の局部を両手で優しく抱いて、根元から裏筋をゆっくり舐め上げた。そして開閉を繰り返す尿道口をすっぽりと唇で包み込む。『黄金』の全身が痙攣し、腰が浮かび上がるのを感じて、『暁』は、その偉大なペニスの先端に噛み付いた。
『黄金』の絶頂の咆哮と共に、口の中に精液があふれ、顔面に鮮血が飛び散った。齧りとられた肉片がぷるぷると精液の海の中で震える。『暁』は舌の上で亀頭の先端だったものを転がし、肉体から離れてなお、尿道口がパクパクと震えているのを感じながら、奥歯でそれを噛み潰し、飲み込んだ。
腹の底に、カッと熱い火がともるのがわかった。力が全身にみなぎる。偉大なる『黄金』が、その祖先より受け継いだ古の力が、自分の身に宿るのがわかる。
「…もっと…もっとだ『暁』…」
『黄金』は鈴口を抉られた男根から、今なお血と精液の混ざり合ったピンク色の液体をドクドクと勢いよく吹き上げ続けていた。それでいてペニスは硬さを失わず、誇らしげに上を向いている。血を流しながらさえ勃起を続け、自らの腕で脚を割り広げて『暁』の口元へ股間をさらけ出すその姿を見れば、『黄金』が望んで肉体を捧げると断じた先の言葉を疑う者など誰もいるまい。
『暁』は血と精液に紛れて、人には見えぬ涙を流しながら、『黄金』の亀頭の残りを噛み切った。『黄金』は歯を食いしばってのけぞったが、その眼は、己の性器の最後を見届けるべく、『暁』の顔から離れなかった。『暁』もそれに答えて、眼をそらさないまま、愛する男の肉片を咀嚼した。
『黄金』が更に腰を突き出して、少し視線を下へやる。『暁』は頷いて、ずっしりと重みのある陰嚢を手に取り、その毛深い皮を歯で切り裂いた。つかみ出された二個の睾丸は、月の光を浴びて宝珠のごとく輝き、『暁』の口の中へ消えていくまで、皆の眼前にキラキラと光の粒をまき散らした。『黄金』の股間から『暁』の口の中へつながる管を通して、『黄金』は『暁』の舌の動き温もりを感じることができていた。出血が続き、身体が次第に冷えていく中、睾丸だけは、抱きしめられているかのように温かい。
『黄金』が再び頷き、『暁』はこの一族を生み出した種を噛み砕いた。芳醇な香りが鼻先まで広がり、舌の上にどろりと広がる組織に、精子が蠢く様を感じ取れるような気がした。ピリピリとした刺激が、舌から喉へ、そして全身へと広がっていく。作り変えられているのが『暁』にはわかった。自分の中に『黄金』が練りこまれていくのがわかった。細胞の一つ一つが、『黄金』と混ざり合って、新しい姿に変化するのがわかった。
背筋を快感がつきぬけ、『暁』は身をのけぞらせて射精した。咥えられたままの精索が『黄金』の破れた陰嚢からズルズルと引きずり出される。頭を失った『黄金』のペニスも、同調するかのように震えて精を放った。この瞬間、二人は一つだった。
「…全部…全部だ『暁』…」
弱々しく訴える『黄金』の擦れた声が、『暁』から外の世界を奪った。
『暁』は、首のない男根を咥えて、傷口から粘りのある体液を吸い出した。そして、幹の中ほどにかじりつく。半円型に海綿体と尿道が途中で切断されたため、血と精液も横から噴き出すようになる。
そうだ、この男の全てが私のものだ。私だけのものだ。
『暁』は己の精液に濡れたヴァギナに鼻を埋め、『黄金』の腫れた陰核を歯で削り取った。震える陰唇を咥えて破り裂いた。全身の性感帯を一つ一つ剥ぎ取っていくたび、『黄金』は夜空に切ない声を響かせた。その官能の歌声に、多くの者が絶頂に導かれ、中には失神して気絶する者もいた。近隣に恐れられる歴戦の勇者たちが、震える股間に両手を挟み、口角から唾液を垂れ流し、新たなる長『暁』に責められ、貫かれ、喘がされ、悶える己の姿を想像し、期待し、瞳を潤ませていた。
『暁』の腕の中で踊る『黄金』の身体には、もはや乳首も、陰毛も、肛門さえ残っていなかった。いたるところに歯型がつき、皮膚と肉が引き剥がされ、脂肪が黄色くぬめっていた。
それでも『黄金』は股を抱え広げていた。表皮を失い剥き出しになった海綿体の残りも天を突いていた。血走った瞳は『暁』を見つめていた。『暁』は『黄金』の体内に腕を突き入れ、前の穴からは子宮を、後ろの穴からは前立腺を掴み出した。引き出された器官を潰すように揉み解し、口をつけて噛み千切り、飲み込む。
全てを忘れて『黄金』の身体を貪る『暁』の腹に、激痛が走った。思わず下腹にやった手の指の隙間から、押さえきれないほどの体液が溢れ出る。『暁』は呆然と、失禁したかのように流れる透明の水を眺めた。これはただの愛液ではない。羊水だ。
「…産まれる…」
ぼそりと呟いた『暁』は、その言葉の意味を知ると、急いでそれを『黄金』に伝えようとした。
「…あなたの子が産まれ! …る…」
『黄金』の瞳からはすでに光が失われていた。
もはや鼓動も打たず、血に汚れた顔に穏やかな微笑を浮かべ、『暁』の顔を見つめている。事切れて尚、そのペニスは、最後の一片まで『暁』の腹に収まるのを望むように突き立っていた。
いや、死んだのではない。
悲しみに流されそうになった『暁』を、再び下腹部の激痛が呼び戻した。
『黄金』は死なない。
『暁』は『黄金』の男根の根元に歯を立てて残った全てを食いちぎると、それを咥えたまま、『黄金』の顔までにじり寄った。
産まれ変わるのだ。
皮をはがれた平らな腹の上に、引き抜いた子宮を積んで、その上に開き始めた自分の膣を並べる。覆いかぶさるように『黄金』の口元に顔を寄せ、餌を分け与える親鳥のように、『黄金』自身のペニスの一部を咥えさせる。
「一緒に産もう…あなたと私の子だ」
押し合わされた二人の股の間で、二人の血が交じり合う。銀色の月光が三色にばらけ、薄れていくのがわかった。
『暁』には見えた。夜明けと共に、二人の脚の間に姿を現わすであろう赤子の姿が。『暁』は『黄金』に深いキスをして、あわせた唇の中でそのペニスと舌を齧った。
産まれる。新しい光が。
私達を照らす、新しい太陽が!
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昔話に語り継がれる伝説の英雄は、産まれ付きその右腕に燃えるように鮮やかな痣があったという。太陽にも見えるその痣は、母の腹の中で共に敵と戦ったためについたものだという。
戦士の子として産まれた王の印は、立ちはだかる敵をなぎ倒す『焔の腕』として恐れられた。近隣の部族をまとめ上げ、巨大な国家の礎を成した黄金の太陽は、今も墓に刻まれた銘に多くの逸話を残している。
完
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投稿:2021.10.04更新:2021.10.04
黄金の太陽−6完
著者 自称清純派 様 / アクセス 7886 / ♥ 22