ヒトにおける社会的地位への身体的筋力および性カテゴリーの因果的寄与
第三惑星ソルにおいて観察された知的種ヒトを対象とした社会構造研究の記録である。本稿では、身体的筋力および性カテゴリーという二要因を操作し、社会的地位の再配分過程を検証した。観測の結果、地位は能力ではなく分類ラベルに強く依存していた。
1 序論
近年、第三惑星ソル(Sol III)において高い知能を有する新種――ヒト(Homo sapiens)――が発見されたことにより、比較心理学研究への関心が再び高まっている(Xh’ptovah-Zai et al., 3624)。ソルIIIに生息する動物種の大半と同様に、ヒトは有性生殖を行う。すなわち、いかなる成体も単独では繁殖できず、形態的に異なる二つの性のいずれかに属する個体との交配を必要とする。ヒトもまたこの例外ではない。
人類の記録された歴史を通じて、多くの社会はこれら二つの性に社会的・知的差異を帰属させてきた(Qrunn-Veel & Tzai’khem, 3661)。明示的であれ暗黙的であれ、その多くの場合において、妊娠しない性(男性)は妊娠する性(女性)よりも平均して高い社会的地位を占めてきた。このことは、教育、富、政治的影響力、職業的機会への不均衡なアクセスを伴っている(Vruul-Xh’ptovah Consortium, 3684)。さらに、男性は平均してより高い身体的筋力を有しており、この傾向はソルIII上の多数の動物種に共通して観察される。
しかしながら、一般知能に関しては、これら二つの性の間に有意な差は存在しない(Nqesh-Rho & Iil’thuun, 3655)。それにもかかわらず、最も近代化された人間社会においてさえ、特に労働が主として知的性質をもつ領域において、社会的地位および代表性の顕著な格差が依然として存在している(Ulq-Veyr & Ssz’naal, 3678)。この事実は、こうした格差が生物学的制約によって直接的に生じているのではなく、むしろ文化的偏見や不平等な社会的取り扱いによって因果的に媒介されている可能性を示唆する(Kzarr’k-17, 3683)。我々の種にとっては馴染みのないこれらの現象は、しかしながらヒトの社会組織において中心的な役割を果たしている。
これまで、人間の心理学者によって提案されてきた民俗的説明、および我々自身の先行研究の多くは、主として相関的アプローチにとどまっていた(Grōv-IX & Pell’ik-3, 3680)。しかし、相関関係は因果関係を確立するには不十分である。二つの競合する仮説を区別するためには、直接的な実験操作が必要である。第一に、性と社会的地位との関連は、性差に伴う身体的筋力の差によって媒介されている可能性がある。第二に、この関連は身体的筋力とは独立しており、主として個体が属する性カテゴリーそのものに依存している可能性がある。これら二つの可能性を判別するため、本研究では無作為化比較試験を実施し、両要因の因果的効果を分離・検証する。
2 方法
2.1 参加者および研究計画
本研究では、出生時に男性であり、現在も男性として自己同一化している成体ヒト1,000名を、参加地域から確率抽出により募集した。被験体は、(i)機能的筋力(典型的男性範囲 vs 典型的女性範囲)および(ii)性カテゴリー(男性 vs 去勢)を交差させた2×2の要因計画に基づき、4条件のいずれかに無作為に割り当てられた。無作為化は、年齢、教育水準、所得のベースライン指標によって層化された。
2.2 介入
機能的筋力は、SJVOと呼ばれる遺伝子編集ウイルスを用いて操作された。本ウイルスは、ホルモン受容体を再構成することにより、現在の性ホルモン水準にかかわらず、身体的筋力が指定された範囲内に維持されるよう設計されている。製造元の技術文書によれば、SJVOに既知の副作用は存在しない。
期待効果や需要特性による心理的交絡を避けるため、ウイルス投与は被験体に通知されることなく実施された。
性カテゴリーは外科的手術によって操作された。去勢は、両側精巣摘出および完全陰茎切除として操作的に定義され、第二次性徴の発達および維持を不可能にし、男性的性行動が成立しない状態をもたらすことを意図した。
去勢条件に割り当てられた被験体への手術は、当該カテゴリー変更が社会的に可視化され、第三者により認識可能であることを保証するため、公衆の場で実施された。男性カテゴリー条件の被験体には、カテゴリーを変更する処置は行われなかった。
2.3 評価指標
主要アウトカムは、介入後12か月時点における社会的地位の複合指標であった。この指標は、(a)職業的地位、(b)個人所得、(c)組織内権限指標(管理人数、意思決定権限等)、および(d)第三者評価による威信・影響力スコアを統合して算出された。地域間の制度差を考慮し、各指標は地域内で標準化された。
副次アウトカムとして、構造化集団課題および自然観察から得られた行動指標を分析した。これには、発話時間、発話遮断率、集団意思決定課題における提案採択率、ならびに他個体からの自発的服従行動の頻度が含まれた。
有害事象は追跡期間を通じて継続的に記録された。事象は、非重篤な医療事象、重篤な医療事象、および死亡に分類された。死亡原因は、利用可能な場合には公的登録記録に基づいて分類し、不明確な場合には情報提供者報告および研究者の判断によって補完された。自己による死亡と判断された事例は、記述目的に限り「自殺」として符号化された。
2.4 追跡およびデータ収集
評価は、ベースライン、介入後1か月、6か月、12か月の4時点で実施された。可能な場合には、雇用記録、所得関連行政指標、身分登録情報が連結された。これらが利用できない場合には、被験体本人および指名された2名の情報提供者への構造化面接、ならびに標準化された集団相互作用場面での直接観察を用いて推定が行われた。
被験体の反応性を最小化するため、研究仮説は明示されず、「一般的医療処置後の健康および社会的適応に関するモニタリング」という包括的説明のみが与えられた。社会的地位の評価を行う調査員は、介入の実施には関与しなかった。
2.5 欠測値および離脱の取り扱い
無作為化後に生じた欠測――転居、撤回、制度的拘束、または死亡によるものを含む――は、主要アウトカムである12か月時点の社会的地位について「観察不能」として扱われた。事前登録された解析計画に従い、主要解析は12か月時点で観測可能であった完全ケースのみを対象として実施された。
感度分析として、途中時点の地位指標に対する最終観測値引き継ぎ法、およびベースライン共変量に基づく逆確率重み付け法を用いた推定を行ったが、これらは補助的解析として位置づけられた。
2.6 統計解析
主要解析では、12か月時点の社会的地位複合指標を従属変数とし、機能的筋力条件、性カテゴリー条件、および両者の交互作用を要因とする二要因分散分析を実施した。年齢、教育水準、ベースライン所得を共変量とする調整モデルは頑健性確認として報告された。
副次アウトカムについても同様の要因モデルを適用した。有害事象および死亡率は条件別に記述的に要約された。死亡は主要評価項目ではなく、検出力も限定的であるため、死亡率に関する推論統計は探索的と位置づけられた。
3 結果
3.1 解析対象
事前登録された解析計画に従い、主要アウトカム(12か月時点の社会的地位複合指標)は 12か月時点で観測可能であった個体を対象に解析した。12か月時点の観測可能数は n=920 であった(対照群 n=240、弱体化群 n=235、去勢群 n=210、弱体化・去勢群 n=235)。観測不能となった主因は転居・撤回・制度的要因・死亡であり、群間で偏りが認められた。
3.2 主要アウトカム:社会的地位
二要因分散分析の結果、機能的筋力の主効果は有意であった、効果量は小さかった。一方、性カテゴリーの主効果は高度に有意であり、比較的大きな効果量を示した。交互作用は有意ではなかった。
群別の比較では、去勢条件の個体が社会的地位指標において一貫して最も低値を示した。この低下は筋力条件に依存せず観察された。特筆すべき点として、去勢条件の地位は、典型的女性範囲の筋力に操作された非去勢個体を下回るだけでなく、外部規範として参照された 女性カテゴリー個体の推定平均 をも下回った。すなわち、去勢条件は女性よりも下方に配置された。
共変量(年齢・教育・ベースライン所得)を投入した調整モデルでも結論は不変であり、性カテゴリー効果は頑健であった一方、筋力効果は小さいままであった。
3.3 副次アウトカム:相互作用的地位指標
構造化集団課題および自然観察において、去勢条件では以下が一貫して観察された:発話遮断率の上昇、提案採択率の低下、他個体からの自発的服従行動の減少。これらの差は筋力条件によらず生じ、性カテゴリー操作が相互作用場面での扱いを直接変更した可能性を示唆した。
3.4 安全性:死亡率と自殺
死亡は主要評価項目ではなく、探索的に集計した。追跡期間12か月の死亡数は、対照群2、弱体化群3に対し、去勢群19、弱体化・去勢群20であった。弱体化・去勢群の死亡数が最も多く、後二条件で死亡が集中していた。
後二条件における死亡の大部分は自己による死亡(自殺)として分類された。去勢群では死亡19例中15例、弱体化・去勢群では死亡20例中17例が自己による死亡と判断された。事前登録計画に従い、死亡は主要アウトカムである社会的地位複合指標については観察不能として処理された。
なお、去勢群および弱体化・去勢群では、死亡に先行して、直近観測時点(1か月または6か月)における社会的地位指標の急速な低下が一貫して観察された。この傾向は、対照群および弱体化群では認められなかった。
4 考察
本研究は、ヒト社会における性と社会的地位との関連が、身体的筋力の差によって主として媒介されるという説明を支持しない。筋力を調整しても、社会的地位の主要な決定因は性カテゴリーであった。つまり、ヒト社会は能力の観察という手続きを経ずに、分類ラベルを優先して地位を配分している(Kzarr’k-17, 3683)。
さらに、去勢群が示した地位低下は、単に男性から女性への移行に相当するものではなかった。去勢群は、女性カテゴリー個体の推定平均よりも下方に配置された。ヒトの分類体系は、二値分類を好む一方で、分類境界から逸脱した個体に対しては、追加的な罰則を適用する傾向があるらしい。これは、分類が記述ではなく規範であること、ならびに規範が逸脱者を必要とすることを示唆する。
追跡期間中の死亡、とりわけ自殺の過剰は、ヒト社会の配分規則が単なる象徴的処遇にとどまらず、個体の生存可能性そのものを左右しうることを示している。
本研究の限界として、性カテゴリー操作は不可逆であり、長期の適応過程を十分に観察していない点が挙げられる。将来の研究では、本手続きを思春期前の被験体においても再現し、主要な発達段階との相互作用を追跡すべきである。
総じて、本研究は、ヒト社会の地位配分が身体的能力に基づく合理的最適化ではなく、分類ラベルとそれに付随する規範的制裁によって強固に駆動されることを示唆する。ヒトがこの体系を「自然」と呼ぶ理由は不明であるが、少なくとも本研究のデータ上は、その自然さは死亡率にまで一貫して反映されている。