カイロ博物館奇談◆PART1〜逃走と捕縛◆はこちら
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隊列が動きだした。僕は両足首が短い縄で結ばれているのでなかなかうまく歩けない。僕は何度かよろめいたが、すぐ後ろにいたヌンが支えてくれた。1時間ぐらい歩かされただろうか。僕たちの隊列は崖に挟まれた広場のような場所に着いた。
左の崖の傾斜は緩く、そこに千人ぐらいの見物人が集まって、思い思いの場所にしゃがんでいた。反対側はほとんど垂直に切り立った崖で、そこに長さ2メートルぐらいに切った太い柱のような丸太が70〜80本ほど、2メートルぐらいの間隔をあけて立てかけてあった。乾燥地帯のエジプトでは木材は貴重なはずだがと思って良く見ると、かなり昔から使い込んであるらしく、表面は灰色に変色していて、下から3分の1ぐらいはなぜかドス黒く変色していた。
崖の間の広場の地面は砂地で、崖際の丸太の前3メートルぐらいのところの地面には、直径1メートルぐらいの縦穴が50個ぐらい掘られていた。穴の横に盛られた土は新しく、掘られたばかりだと分かった。
横を通らされたときに覗いてみたら、竪穴の上部は漏斗状で、下部は直径50センチぐらいに狭まってから、そのまままっすぐに掘られているようだ。深さは2メートル以上はありそうだ
僕たちを結んでいた長い縄は解かれ、その丸太の前に一人づつ連れて行かれた。
「こいつの猿轡と足枷はどうする。」
一人のエジプト兵が僕を指差して言った。
「ここまで来れば観念するだろうから外してやれ。」
別の兵士が答えた。
僕の猿轡と両脚を結んだ縄がようやく外された。猿轡のせいで喉はカラカラで、足枷に引っかかって何度か転んだので、両膝がすりむけている。僕もようやく腰を下ろすことを許された。
エジプト兵の指揮官が遠くで叫んだ。
「準備にかかれ。」
すると列の一番先頭にいた確か名前はイテロとか言う20歳ぐらいの捕虜仲間の1人を、3人ほどの兵士が取り囲んだ。
「服を全部脱がせ。」
兵士が命令したが、イテロはエジプト語が分からないらしくきょとんとしている。
僕以外でただ1人エジプト語が分かったアロンが声掛けしようとしたが、兵士は問答無用と3人がかりでイテロを立ち上がらせて服を脱がしてしまった。捕虜仲間の服は、後ろ手に縛られたままでも両脇の紐を外せば脱げてしまうから簡単だ。下半身は紐を一箇所外すだけなので、もっと簡単だ。
素っ裸にされたイテロの性器は包茎だった。彼らに割礼の習慣はないらしい。
イテロは崖ぎわの丸太のところに連れていかれ、丸太を背にするように立たされてから、後ろ手に縛っていた縄を一旦解かれ、改めて丸太を背負うように縛り直された。兵士らは続いて自由になっていたイテロの両足首を、丸太の後ろに回してから、丸太にきつく縛り付けた。
イテロはちょうど丸太を背中で抱きかかえたような姿になり、無防備な股間の一物だけが前方に晒されている。
続いて2番目の捕虜のところに兵士が駆け寄ってきたが、イテロを見ていた捕虜はもう分かっているとばかりに、兵士がなすがままにされている。こうしてちょうど25人目に僕の順番が来た。
やはり3人の兵士が寄ってきたが、僕の変った服装を見てどうしようといった感じで顔を見合わせている。
「後ろ手の縄を外してくれれば自分で脱ぐ。」
僕がエジプト語で言ったので、兵士たちは驚いた様子だったが、自分たちの言葉というのが効いたのだろうか。結局僕の縄は外された。
「今なら逃げれるかも。」
一瞬そう思ったが、周囲には100人以上のエジプト兵と千人のエジプト人の見物人、そして前後は崖で左右は狭い入口、とても無理だと観念した。
僕はおとなしく白の袖なしシャツ1枚と白い半ズボンのジーンズを脱いで、パンツひとつになった。珍しい服装にそれまで静かだった見物人からどよめきの声が上がった。続いてパンツも脱いで全裸になった。
元々の肌が浅黒い捕虜仲間と違って、僕の色黒は日焼けなのでその部分だけ白い。観客はますます騒がしくなった。
兵士は見物人のそんな反応に一切構わず、僕を同じように丸太に縛り付けた。
兵士の1人が
「以前、陰茎を切っていて袋だけ残ったの股ぐらだった捕虜がいてびっくりしたが、今の見物人の反応はそれ以来だな。」
など不気味なことをつぶやきながら、次に隣のヌンを脱がして縛るために移っていった。
こうして1時間ほどして僕たち捕虜仲間は全員、観客に股間を晒したまま、並んだ丸太に縛り上げられた。丸太は20本ほど余っているが、目の前の穴の数はぴったりだ。
見物人が急に静まり返った。
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投稿:2011.07.03更新:2022.07.28
カイロ博物館奇談◆PART3〜処刑広場にて◆
著者 名誉教授 様 / アクセス 19480 / ♥ 58