初めての方は古城の中から◆PART1〜バブルの果て◆からお読みください
この作品は古城の中から◆PART5〜体験コースご案内◆からの続きです
「皆様こんにちは、只今ご紹介に預かりました東洋文化大学法制史教室の中山勝利です。」
「今日の内覧はいかがでしたでしょうか。私は各種展示の中では「宮刑体験」の希望者がずいぶん多かったのに驚きました。去勢願望があっても、麻酔もなしにイチモツをバッサリ切られるなんて、普通なら躊躇しそうなものです。それなのに体験予約が途中で締切になる盛況には、ただびっくりです。」
「その一方で、拷問をアトラクションにしてしまう自動体験コースに興味を覚えました。特にAコースは遊園地でもあまり見かけない、立ったまま体験していく設計になってまして、なかなか凄いと感じました。本格オープン後の、一般のお客様の反応が楽しみです。」
「せっかくですからここで、古典的なジベットケージとダッキングストゥールの画像をご覧いただきましょう。これが元になってるんですね。昔の人はよく考えたものです。」
「さて、本題に移りますが、今日は世界の刑罰の歴史の中から身体刑のお話をしたいと思います。」
「身体刑は、別名を肉刑とも呼ばれ、犯罪者の身体を損傷したり、苦痛を与える刑罰です。」
「その中でも犯罪者の生命を奪うものを、特に死刑と称しているわけです。」
「死刑以外の身体刑は、先進国ではほとんど姿を消しましたが、東南アジアの鞭打刑や、イスラム法国家での手首の切断刑など、現在でもまだ行われているものもあります。」
「今回は、単なる苦痛だけではなく、実際に肉体に回復不可能な損傷を与えるものを取り上げて行きます。」
「さきほど、先進国では身体刑は見かけなくなったと申しましたが、実はそうでもありません。」
「現在でもアメリカ合衆国の一部の州では、性犯罪者への去勢刑・・・これは宮刑とも呼ばれて中国が特に有名ですが・・・が、実施されています。」
「さて、一口に世界と言っても大変広うございますので、ちょうど中国が出てきたところでもあり、これから主にかっての中国の歴代王朝で行われてきた身体刑を取り上げてみたいと考えております。」
「秦、漢の時代に始まり、隋になってに五刑としてまとめられた刑罰体系の中には、先の宮刑を始め、鼻削、足切、入墨などの身体刑がありました。」
「この身体刑は廃止されたり復活したりを繰り返しました。」
「その上は死刑、その下は徒刑と呼ばれた懲役刑なのですが、身体刑部分を廃止すると中間が開き過ぎて、かえって死刑が増えるということもあって、完全廃止はなかなか行われませんでした。」
「死刑の方法を、首を切る斬首と腹部で切断する腰斬があって、軽い死刑と重い死刑を区別して補うといった本末転倒な事態も起こります。」
「ここに絵画がありますので見て下さい。博物館には実物も用意してあります。」
「希望者に腰斬刑体験も実施してみましたが、胴体を切断」されたあともかなりの時間生存していることが確認され、かなり凄惨な刑罰だったことが分かりました。
この腰斬刀は、鈇鑕または鍘刀とも呼ばれますが、この博物館にも実際に体験できる実物がいくつも置いてありますので、中国の極刑に興味ある方はぜひ体験してみてください。
「こうして多様な死刑が行われると、身体を一気に燃やす火刑と、一寸刻みに肉を削いでいく凌遅処死とどっちが重いか、識者の意見が分かれるということもありました。」
「唐の時代に鞭打刑以外の身体刑は一旦無くなりますが、周辺国では存続し、戦乱の時代になると復活するといったことを繰り返します。」
「統一王朝が樹立されると消えることが多かったのですが、征服王朝、例えば元では、牛を盗むと鼻削刑、ロバを盗むと入墨刑といったことが行われていました。」
「漢民族王朝でも例外があって、さきほどの宮刑は、統一王朝である明の時代に復活しています。」
「さあ、ここからは、いよいよ身体刑の実証実験を皆様の前で行いたいと思います。」
「本日の実験台として身を挺してご協力いただけるのは、和洋史学講習所ボランティア会員の中でも、特に志願されてアーティストの資格を取得された方々です。」
「また、刑吏の役割をスタッフの方々にお願いします。」
「まず最初は入墨刑です。これは黥刑とも呼ばれます。日本の江戸時代の入墨刑は腕に入れる場合が多かったのですが、中国では顔に入れました。」
「名乗り出たボランティアの方は・・・・わー、ずいぶんイケメンさん揃いですね。」
「このハンサムなお顔を入墨で醜くしてしまうのは、ちょっともったいないですが、今日は容赦なくやっちゃいます。最初のお2人には顔面に悪とか犬の文字を入れた江戸時代の入墨を体験してもらいます。」」
「スタッフの皆さん、椅子に縛り付けて下さい。」
「そうそう、まず墨で文字を描いてから、針の束をズブズブ刺していきます。入墨の文字は犯した場所や罪によって違っていました。」
「図案の形に万遍なく針を刺し終えたら、その上から墨を刷り込みます。さあ、できあがりました。」
「次に、江戸や幕府直轄領の入墨刑の実演です。これは腕に2本の線を入れるので有名ですね。ボランティアさんが1人なので、両腕を使います。」
「去勢者の方なので、全裸で登場です。宮刑に比べればどうってことない刑ですね。中国でも髄王朝までは、宮刑は死刑の次に重く、黥刑は一番軽い刑だったようです。」
「次に、現代風にアレンジした入墨刑を体験いただきます。もし、現代にも入墨刑が残っていたらこんな感じだったのでいかと想像しました。日本風の想定の漢字の入墨と西欧の想定のローマ字の入墨を用意しました。」
「英語の飾り文字はファッションにも見えなくもありませんが、犯罪者という意味の言葉と自分の名前を彫り込まれるように、最も過激なバージョンになります。」
「日本語は実によく目立ちます。このお顔では街を歩けませんね・・・・黥刑の効果が実に良く分かります。」
「さて、5人の黥刑が完成しましたが、暴れるといけないので縄はしばらく解かずにそのままにして置きます。観察したい方はお近くにどうぞ。」
「この黥刑は体験できるコーナーを設けていますので、希望者はどなたでもお立ち寄りください。」
「ただし、文字や場所は抽選で決まりますので、自由には選べません。ご了承願います。」
「次は鼻削刑です。鼻削刑には鼻だけを削ぐ方法と、上唇も一緒に切る方法がありました。今日は鼻だけの方法で行います。」
「では、お越しください。おお、これはまた美青年クンの登場ですね。」
「でも残念ながら、鼻削刑は、先ほどの入墨刑以上に、容貌が醜くなりますよ。やってみましょう。」
「今度は先に縛り付けてから仰向けに寝かせて、顔をぐっと天井を向かせて下さい。」
「この鋭い短刀を鼻の下にあてがい、そのまま刃を上に押し上げて、鼻全体を切り落とします。」
「出血が多いので地面の上で行う方がいいでしょう。さあ、鼻が削ぎ終わりました。血を拭いてから皆さんにお顔を見せてあげて下さい。」
「ここで、過去の鼻削ぎ刑の体験者お二人にもご登場願います。元々はかなりの美青年だったのが、人前に出られない顔になってしまっていますね。」
「これは刑余者の識別としては、入墨刑以上に効果的なことが分かります。」
「さて、入墨刑や鼻削刑は、普通は容貌を別とすれば日常生活にさほどの支障は生じませんが、次の方のように上唇も同時に削ぐと、そうはいきません。」
「上唇も一緒に削ぐのは、元々は戦場で敵兵の鼻を削ぐときに髭で男女を見分けたのが始まりと言われていて、それがその後に鼻削刑でもより重罪のものに適用されたのが始まりだそうです。」
「容貌はもちろん単純な鼻削刑より醜くなりますが、それだけでなく、会話や食事にも影響が出てきます。」
「ダースベイダー鼻削などとあだ名されていますが、ちょっち調べてみたところ、単純な鼻削ぎよりこちらを希望する体験者も多いようです。」
「さて、この上唇と同時の鼻削刑もなかなか辛いですが、次の脚切刑はもっと過激です。」
「脚切刑は『剕』『刖』『臏』などの文字で表されます。臏は有名な兵法家の孫臏が受けたことでも知られますが、複数の字があるのは、処刑方法が各種あったからだと考えられています。」
「大きく分けて、大腿部から切断する方法、膝の膝蓋骨を取り外す方法、足首を切断する方法などが知られていて、両脚に執行する場合と片脚だけの場合がありました。」
「そういうわけで、今日は3種類それぞれの方法を実験します。3人の方、靴と靴下とズボンを脱いで下半身はパンツだけになって、そこの椅子に腰かけて下さい。」
「今回は右脚だけに執行しますので、スタッフの方は3人の両手と左足を椅子にしっかり縛り付けて下さい。続いて腰の上も縛って下さい。」
「次に右脚を真っ直ぐに伸ばして手前の台に固定します。」
「どうしましょう。向かって左の方から順番に『大腿部』『膝蓋骨』『足首』でよろしいですか。それぞれの場所の脚の上側を固く縛り上げて下さい。」
「できましたか。では切断を始めて下さい。」
「おっと、最初に右の方の足首が刀でバッサリ切り落とされました。左の方の太腿も中国刀の刃にかかってゴロンと転がり落ちましたね。真ん中の方は長引いています。膝蓋骨を取り外すのは手間なようです。」
「今、終わりました。これで真ん中の方も歩くことはできなくなりました。お疲れ様でした。」
「今日の身体刑実証実験の最後は宮刑、つまり去勢刑です。世界の去勢刑には、先のアメリカのように睾丸だけ摘出する方法や、アフリカのように陰茎だけ切断する方法もありましたが、中国の場合は完全去勢と言って、陰茎、陰嚢とも残さすに全部切り落とされていました。」
「トルコやアラブなどのイスラム諸国では、この3種類の方法が全部行われていました。どの方法が効果的なのか、その後の性欲や行動にどのような違いが出るかは、研究テーマとしても大変興味深いところです。」
「そこで、半年前に、私の研究室の学生に呼びかけて、3人の学生にそれぞれ、睾丸摘出、陰茎切断、完全去勢の手術を受けてもらいました。」
「今日はその3人の学生が、私と一緒に来ていますので、それぞれ今の感想を一言づつお話いただきます。」
「昨年睾丸摘出をしてもらった東洋文化大学法学部4年生の鈴木隆です。3年生で手術を受けてから性欲が無くなり、ペニスも勃起しなくなりました。」
「陰茎切断術だけを受けた同じく4年生の佐久間英道です。僕は性欲は普通に残っていて、女性を見るとムラムラしますが、オナニーがうまくできないので苦しいことは確かです。」
「完全去勢した高橋昭俊です。僕だけ文学部東洋史学科です。僕は2年生で手術をしました。それから性欲も女性への関心もなくなりましたので、不自由な点と言えば、トイレで小用のときにも個室が必要なことぐらいです。」
「3人の学生諸君、それぞれいろいろあるようですね。せっかくですから学生さんそれぞれの股間部を皆さんに見て戴きましょう。」
「そうそう、ベルトを外して、ジーンズを下に下げて、パンツも下して下さい。」
「鈴木君はよく確認できませんね。ちょっと手でペニスを持ち上げて陰茎の付け根の裏に何もないところを確認してもらって下さい。」
「鈴木君はペニスが残っているといっても小さいですね。佐久間君の股間はフクロだけ残っていて実に不思議な姿ですね。高橋君がある意味一番すっきりしてますね。」
「皆さん、よくご覧になれましたか。実験結果の最終報告はまだですが、一足先に皆さんに中間報告させて戴きました。それでは学生諸君、お疲れ様でした。」
「さて、お話を中国の宮刑に戻します。完全去勢の施術方法は、受刑者をベッドに寝かせて行う方法、椅子や段差に腰掛けさせて切る方法、立たせたり柱にもたれさせた姿勢で切断する方法などがあったようです。」
「宮刑の実証実験のボランティアの方は3人お見えですね。青年の方2人と中年の方ですね。ます、下半身の衣服は全部脱いで下さい。靴もパンツもです。」
「次にベッドにお1人、椅子にお1人、そこの柱にお1人と別れて下さい。どれを選んでもいいです。」
「ベッドの方は、お1人は大股開きで大の字になって仰向けに寝て下さい、スタッフの方はベッドに押さえつけて動けないようにして下さい。」
「椅子が中年の方ですか。では、股を開いて腰掛けて下さい。スタッフさんは身体を固定させてください。」
「残りのお1人はその一本柱の前に立って、手首と足首を柱の後ろに回して下さい。そうそう柱を背中に抱きかかえるような感じです。手首と足首を縛り上げると、性器がぐんと前に突き出た姿勢になります。念のため腋の下と腹部にも縄を回します。」
「これで準備完了です。ベッドの方は見難いので横向きにします。椅子と柱は正面向きでいいですね。」
「それではこれから3人の性器の根元を強力な紐で緊縛します。中国の去勢なので陰茎と陰嚢をまとめてその根元を縛ります。」
「ベッドの方は陰嚢と陰茎の間にも紐を通してぐるぐる巻きにしてから、その紐の先端を左右に強く引っ張ります。」
「これで恐怖で縮ぢこまっている性器も、十分にエレクトして、切り易くなってきました。スタッフの方は手術に使う去勢刀を見せて下さい。股間の形に合わせて少し湾曲してますね。」
「ボランティアの方、覚悟はいいですか。それでは一斉に切断しましょう。イー、アール、サン!」
「素晴らしい、見事なお手際です。ベッドの方の性器の塊が一瞬でスパッと切り落とされました。柱の方の性器は2メートルぐらい飛びました。椅子の方は悲鳴ひとつあげずご立派でした。実に男らしい・・・といっても、この瞬間にもう男じゃないわけですが。」
「股間の傷痕に尿道口がありますので、探してそこに栓を差し込んで下さい。」
「尿道が塞がると面倒ですので。この栓が抜けるまでの2日間は小用も禁止です。」
「傷口を熱い油や灰で消毒してから、傷痕に油紙を当てて、その上から股間部全体に布を巻きます。中国の宮刑では傷口は縫わないのが普通ですが、出血で死ぬようなことは稀です。」
「2日後に栓を抜くと尿が噴水のように吹き出すはずです。それで宦官の完成となります。完全な治癒までには、個人差がありますが、もう少し時間がかかります。」
「それでは、私の本日の講演を終わらせて戴きます。この後のパーティでは、先ほどお話したことに関係する特別イベントをあるとお聞きしています。私も楽しみにしています。それではありがとうございました。」
(PART7に続く)
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投稿:2014.02.04更新:2023.07.28
古城の中から◆PART6〜衝撃のスピーチと実証実験◆
挿絵あり 著者 名誉教授 様 / アクセス 38391 / ♥ 180